与野党双方に責任がある日銀総裁空席危機
国際的に金融市場が混乱しているなかにもかかわらず、ついに任期切れが明日に迫り、我が国は中央銀行である日本銀行の総裁が空席になるという異常事態を招こうとしている。この責任は果たして武藤敏郎氏の日銀総裁を拒否した野党だけにあると言えるのだろうか?
答えは“否”である。今国会ではねじれ国会であるということが前提であることを忘れ、あらゆる対応が与野党双方で後手後手になっているのである。*1すなわち、与党側は「対案対策・否決対策など考えなくても良い」今までどおりの日程感覚でスケジュールを組み、野党側は「対案の遅れやアピール不足」によりかつての“何でも反対党”と揶揄された日本社会党のイメージをダブらせてる状況で、デッドロックしているのである。
http://d.hatena.ne.jp/svnseeds/20080318#p1にあるように一方的に野党の責任と断罪する向きもあるが、元々武藤敏郎氏はwikipedia:特定住宅金融専門会社の破綻問題(いわゆる住専破綻)の際に大蔵省の総務審議官として「破綻前処理」と称して6850億円もの税金をドブに捨てたことを決めたメンバーの一人なのである。*2こんなことができたのは当時は「財政と金融の分離」などなく“癒着”していたからである。この一件を契機に「財政と金融の分離」を原則とするルールを定めたwikipedia:金融国会に繋がっていくのである。そしてこの金融国会で「破綻後処理」「財政と金融の分離」を原則とするルールを定めた中心のメンバーが現・民主党の(小沢一郎氏を除く)中心メンバーなのである。したがって、そのような遺恨のある武藤敏郎氏の日銀総裁就任に延々とこだわった与党にも読み違いがあり、責任の一端は免れないのである。*3
一方の野党はというとこちらにも重大な責任があるのである。民主党は国際金融に強い元財務官の黒田・渡辺両氏を提案している。しかし、いかんせん「国際金融に強い人物を持ってきたぞ」というところを強くアピールしきれずに、「こちらも財務省出身ではないか!」と突っ込みを入れられている。*4この点に強く論理的に反論できなかった野党の責任もまた重大なのである。
そしてひょっとすると真に責任を負っているのは「政治ニュース=政局」という観点からいつまでも抜け出せないマスゴミにあるのかもしれない。*5
日銀総裁人事は、政府が18日提示した田波耕治・国際協力銀行総裁の起用に民主党が難色を示し、総裁「空席」が避けがたい情勢になった。金融市場の混乱と世界経済の不透明感が強まる中、経済界や市場からは政府・与野党への批判が高まっているが、国際的信任の低下や業務への支障が懸念される日銀内にも困惑が広がっている。